私は、1960 年に静岡県清水市(現 静岡市)に、清水シャーリング株式会社(現 株式会社アイ・テック)を設立し、一貫して鉄の流通業者として歩んでまいりました。主に建築鉄骨の加工や流通業務を行ってまいりましたが、その他にも造船、自動車、家電、機械、仮設材業など、さまざまな業種に対して、鋼材を供給してまいりました。近年では、鉄に代わる素材として、石油由来の様々な樹脂に加え、ガラス繊維や炭素繊維など新たな素材も次々と開発されています。
　しかし鉄はその資源埋蔵量が豊富であること、またそれ自体がリサイクルに優れる人工の循環材料であるという観点から、材料がもつ優位性は現代においても揺るぎないものがあります。また近年では、様々な性能を有した鋼材がメーカーから開発されており、今日わが国に流通している鋼材規格は多岐にわたります。このような社会状況を鑑みると、今後も鉄の利用技術は、人類社会の発展とともに拡大し続けるものであると、私は確信しております。
　われわれ大畑財団は、この様なすばらしい素材である鉄の利用技術の拡大・向上を目指して、国内の鉄の利用技術に関する研究活動や、これに携わる研究者・開発者を支援します。この活動を通じて、わが国の産業の発展と安全な社会の実現に寄与するとともに、人類社会の豊かな生活および地球環境の保全に貢献してまいります。

2015年4月
理事長　大畑栄一